3 失われた記憶

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「ええ、まあ……そういうことになりますね」  北城慧が、当然のようにそう言ってうなずいたので、オレはまたまたビックリした。  よく聞いてみると、彼はもともと、餓鬼や悪鬼と戦うときのことを考えた上で、こういう形で働くことを選んだらしい。  確かに、残業が多かったり、生活がものすごく不規則になるような職場に入ってしまったら、いざ餓鬼が現れても、すぐ駆けつけることができない。  この仕事も締め切りがあるから、締め切り間際はかなり大変らしいけど……  でも、会社に拘束されているよりは、通勤時間がないだけでも自由な時間は増えるし、仕事も自分のペースで進めることができる。  うちの親父も、普通の勤め人ではあったけど、今になって思うと、ほとんど残業のない会社を選んでいた。
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