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まだまだ幼い子供だと思っていた愛美も今では中学生。背が高く黙っていれば同年代の子供より年上に見られることもある彼女のこと、いや、見た目に関係なくふたりで歩いていると端からは「援交ですか?」と洒落にならない指摘をされかねない年齢にさしかかっている。距離を取ろうと必死な大人の思惑や都合などかまわず『デート』の約束をさせられ、付き合わされた街中で職務質問を受けたことも残念なことに一再ならずあった。
断ればいいのだ、けれど、どういうわけかこの娘の頼み事は小さい頃も、今も、断り切れない困った自分がいる。
なので、愛美は子供の頃と変わらず彼にまとわりつくわけだ。
今、何時だ? と目を向けた先のデジタルパネルは朝五時半前を告げている。
いくらわがままな愛美とはいえ、今時の子供は妙な所で常識人ぶる。早朝深夜の時間帯にお電話をしてはいけない、非常識はだめ、と親に言い含められるまでもなく自分から行動をするのだが、今日は特別なのか、早朝過ぎる。彼女から言わせると非常識な時間帯だ。
しかも、携帯ではなく固定電話にかけたてくるあたりに、相手の都合そっちのけで絶対に起こしてやるんだという意志を感じる。
「どうした、こんなに朝早く」あくびを押し隠して問う。
「オリンピック!!」電話口は興奮しきりだ。
「は」麗は巡りの悪い頭で何事か考えた。
「やだ、知らないの? TVとかインターネット観てよ!」
無茶を言うな。
たった今たたき起こされた自分が、情報ツールを確認するわけないだろう。
「何があったんだ」
今度はあくびを隠せず再度訪ねた。
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