東京オリンピック

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普通、娘を構いつけるのは父親の役所であるはずだ。事実、友人は「たまには断れ!」と抗議に来る。「父親がもっと監督しろ!」と言い返すふたりの文句は平行線を辿る。 肝心の愛美が父親の監督をするりと抜けてしまうからだ。彼女宣って曰く、「お父さんはお母さんとラブラブしてればいいんだ」 娘のご託宣を聞かされる、友人の妻は苦笑し、友人は傷付いた顔をして麗を睨みつけるのだ。そして「だから断れと言ってるだろうが!」と非難をする。「だからお前がきちんと監督しろ」と言い返す。平行線だ。お門違いな恨まれ方をするこちらこそ災難というものなのだが。 そんな麗の都合にはお構いなく、弾けまくってる愛美は嬉しさ全開だ。電話のこっちでも嬉々とした様子は充分に伝わってくる。 「……でね、聞いてるの??」 電話の向こうは言う。ふんふんと流し聞きをしている彼を彼女はまったく許さず、生返事になったタイミングを逃さない。 「聞いているよ」 「2020年って7年後でしょ、その頃はどうなっているのかなあ」 「私も君のお父さんも40をとうに越している」 「もう、夢がないなあ!」 ぷんぷんなんたらと彼女は口走るが、麗はさくっと右の耳から入って左の耳から出て行くを慣行した。
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