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恋のひとつやふたつ経験していてもおかしくない。
麗と一緒に観ようと約束したことも忘れ、家族と、あるいは他の男と過ごし、世紀の一大イベントを人生の一ページに加えて輝かんばかりの青春を謳歌していることだろう。
そう。
もう、子供ではないのだから。
ぼとりと指の間から煙草が落ちた。
おたおたと煙草を拾いながら、TVから脳天気に聞こえてくる「オリンピックばんざーい」の歓声を耳にして、麗は額を押さえた。
いつまでも子供だと思っていた友人の娘の、遅からず訪れる将来の姿が彼を苦しめる。
早く大人になればいい、そして自分から他の男に興味を移してくれればいい。
けれど、本気でそう願っているのか?
インタビューを受けていた女性達が語った、「子供と一緒に観たい」はあくまでも口実だ、大切な人と、大切な時を共有したいと願う心は人間なら誰でも持ち合わせるもの。
愛美もきっと同じことを語っている。
七年後の自分は、果たしてどうなっているのか。
今と同じ暮らしを続けているのか、それとも……
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