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2013年9月7日の東京は曇天の日曜。
午後に入った今も雨が降りそうでなかなか降らない。
そんな昼下がり、麗のスマートフォンへ、海外赴任している女から数週間ぶりにメッセージが入る。
彼も木石ではない。時に食事し、付き合い、夜を共にする女性ぐらいいる。彼女もそのひとりだ。麗にしては珍しく付き合いが長い。愛だ恋だと重いことを口にしない軽さがお互い似通っている。だから続く。
「こちらでも大きな話題になってる」とメッセージは伝える。
二、三回メッセージを交わした後、途中から電話に切り替え、久方ぶりに声を聞いた。
彼女は声が素晴らしい。しっとりと語る声音は大人の女そのもので、安らぐ一方情動を?き立てられる。
目の前に彼女がいないのが残念なくらいだ。
他愛無い話題をぼつぼつと交わしながら、ふと思いついて聞いてみた。
「7年後、何をしている?」
「いやだ、麗もオリンピックづいているの?」と問い返した女は低い声で小さく笑う。
「柴田クンも、案外子供っぽいところがあるのね。びっくりしたぞ」
「こいつめ」麗は含み笑いをする。
「LINEでスタンプを使う時点で君も同罪だ」
「ホントだ」
ほがらかに笑う女の声は艶を含んだものに変わっていった。
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