第一章 記憶はサイレンと共に

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聖マザー学園。 郊外にポツンとたたずみ、外観は近未来的。 入口には大きな門があり、高い鉄柵がぐるりと学園を囲む。 中に入ると校庭は整備され、ガラス張りの玄関を入ったエントランスには、慈愛の象徴とも言える聖母のモニュメントが飾られている。 親や兄弟がいない子や恵まれない子があずけられたこの施設は、政府の資金によって運営されていた。 生徒数は約500名。 小さな子供から中学生ぐらいの子までが在籍し、常に政府の監視下にはあるものの、国が運営するだけあって衣食住だけでなく、学問においても平等に学べる何ひとつ不自由のない施設であった。 お昼休み、校庭や教室で多くの生徒が自由な時間を過ごす中、可奈子は3階にある休憩室の窓際の席にいた。 フリルのついた可愛い洋服に身を包み、時折、窓ガラスに映った自分の髪型を気にしながら趣味のアクセサリーを作っている。 クリアにレッド、ブルーにオレンジ、ライトグリーンにパープル。透き通った紐に、いろんな色のビーズを連ねていく。 毎日のようにオリジナルのアクセサリーを作っているが、どれひとつとして同じものはない。 何不自由のない学園生活で、何か不自由さを感じていた可奈子にとって この時間は無限に広がる、何よりもかけがえのないものだった。
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