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そして現在、リビングにある食卓。そこにふたりは居た。
目玉焼きをはじめとする紅井お手製の純和風の朝食を挟んで紅井の向かい側に座すは、ナナだ。
「おぉー……。ご主人様がこれを……! ご主人様が料理上手なんて意外です。驚天動地で吃驚(びっくり)仰天ですよぅ」
「……そんなか?」
「ご主人様ったら、私にドッグフードしか与えていなかったから、てっきり……」
「別に、料理ができないからドッグフードをあげてた訳じゃないからな」
大体においては犬の食事はそれぐらいしか与えるものがないではないか。そこを指摘されてもどうしたらいいか分からなかった。
「……ん? つかじゃあ、あれか? 人間になったいまも、お前の主食はドッグフードのままなのか? 一応そこに置いてあるのがお前の分の飯なんだけど」
「ご主人様の手料理は当然頂きますけど、何故にドッグフードなんてもの食べなきゃいけないんですか」
「ひどい言い草だな。仮にもお前のいままでの主食だったろうに」
「姿が変われば好みも変わるものなんですよ。ソースは私です」
「そういうモンかねえ……。じゃあ今の姿での大好物とかってあるのか?」
「ありますよ? 例えばご主人様の精え」
「自重しろドアホ」
「でもまぁ、大好物はさておき、私の主食ならもちろん、ご主人様のソーセーじひゃうんっ!?」
下ネタマシーンと化したなんちゃってメイド・ナナの脳天に手刀を一閃。
「ナナ、キサマを黙らせたい」
本作の不健全化ひいては非公開を食い止めんとする紅井の双眸は、本気と書いてマジの光を宿していた。
「あぁんっ……ご主人様のチョップ……すごく……激しいです……。はぁはぁ……痛いのに……癖になっちゃいますぅ……」
「なん……だと……!?」
物理攻撃によるダメージは0。どころかこの変態は、それでHPを回復しようとしているではないか。
勝てない(色々な意味で)。紅井はそう悟った。
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