70人が本棚に入れています
本棚に追加
「……お、来たな拓二(たくじ)」
章など跨いでシリアスっぽく未知の来訪者が来たように見せ掛けたが、もちろん全然そんなことはなく。
今しがたインターホンを鳴らした来訪者に、紅井は普通に心当たりがあった。
ナナを待機させて紅井は玄関へと向かい、扉を開けると、来訪者にして小学校からの腐れ縁の親友でもある──荒川(あらかわ)拓二の姿を確認する。
「グッモーニン一矢! 準備はもう出来てる?」
朗らかかつ朝っぱらからハイテンションで紅井へ挨拶をする拓二。
茶色の短髪と、童顔ながら爽やかさを与える整った顔立ちに加え、さらに滅多に絶やさないスマイル、穏やかな口調が彼の特徴である。
とまあ、それはさておき。
前述の通り紅井は毎日だいたい8時に家を出るのだが(11ページ参照)、実はその8時になると拓二が──何故か1分の狂いもなく紅井の家を訪れる。
そうして拓二と共に学校へ向かうのが紅井の毎朝の登校の仕方なのが、しかし今日はそれにしては──
「──なんかお前……今日は珍しく来んの早くないか? まだ45分だぞ?」
紅井はまだ朝食の後の歯磨きを終えていなかった。いつもなら、拓二が来る大体50分ごろには磨き終わっている。
最初のコメントを投稿しよう!