70人が本棚に入れています
本棚に追加
本当に毎日1分も狂わずに8時に訪ねてくるからこそ、毎日ほとんど同じ生活ペースで過ごしているからこそ、15分も早い今日の訪問は、紅井にはなおのこと疑問に感じられた。
しかし拓二は特段なんてこともないような軽い口調で、「あぁ、それ?」と言い、
「いやー、今日はなんか……一矢の家から美少女の匂いがしたからねー」
瞬間、紅井は驚愕に目を見開いた。
当たっていた。
しかも、見た目だけは美少女なナナが現在の姿になったのも今朝からなので、「今日は」という所まで正鵠を得ていた。
日頃から拓二が女好きだという事は知っていたが、もはやそれが嗅覚とかを超越した段階まできたとなると、驚くと言うか普通に引くレベルだった。
せっかく見てくれは良いんだから、もう少しマトモでも罰はあたらないだろと紅井は思う。
などと紅井が、人間を卒業した親友の残念さを改めて実感したところで。
「ご主人様ー? 今日もこんな時間から訪ねてきたんですか?」
変態の登場である。
「女の子の声!! やっぱり居たんだね一矢! しかも一矢、『ご主人様』なんて呼ばれちゃってんじゃん! もしかするとメイドさんか何かなのかな? どれどれ、僕に見せて見せて!」
そして、やはりと言うべきか、女性(ナナ)の声を耳ざとく察知する変態2号。
(しまった……。こりゃあ面倒なことになりそうだぞ……)
色々ブッ飛んでる変態美少女と、女好きが高じて人間を軽く卒業した変態。この状況でそんな二者が邂逅したら一体どんな波乱が起きることやら。
いや、ナナが犬だった頃から拓二とは面識があるのだが、とにかく一筋縄ではいかなさそうである。
最初のコメントを投稿しよう!