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「……で、ナナ。けっきょく何なんだよ?」
変態どもが馬鹿やってるせいでナナの言おうとする事を聞きそびれてしまったため、紅井は仕切り直すようにナナに訊ねた。
「いや、そういえば時間は大丈夫なのかなと思いまして」
ナナの言葉に、ハッとした紅井は、玄関からでも見える位置にある壁掛け時計を見た。
目に入ってきた時刻は、8時11分。
遅 刻 す る。
紅井がそう思考すると同時に、紅井の時が止まった。
いつも8時に出てギリギリ間に合うぐらいだから、馬鹿なことを(主にナナと拓二が)やってたせいでそこからさらに約10分も遅れた今日は、間に合わないだろうと言えるからだ。
「……拓二」
「分かってるよ、一矢。戦わなければ生き残れないんだよね……!」
硬直を解き、なにかを決意したかのように静かに拓二を呼ぶ紅井に、呼応する拓二。
彼らはまるで、これから死地へと赴かんとする戦士のように頷き合うと、覚悟を決めたようだった。
「ナナ、悪ィけど留守番は頼んだぞ!」
「帰ってきたらデートしようね!」
急ぎからくる早口で口々に言いたい事を伝えたふたりはナナに背を向けると、学校を目指して並走して行った。
「いってらっしゃいませ、愛してますよご主人様~♪ 逝ってらっしゃいませ、そして二度と帰ってこないで下さいクソ虫」
そう言って手を振り、ナナはふたりを見送った。
当然だが、前半は紅井に向けて、後半は拓二に向けての言葉だ。本当に紅井と拓二への態度が天と地の差である。
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