70人が本棚に入れています
本棚に追加
◆ ◆
「はぁ~……。危なかった……」
結局、紅井と拓二はどうにか遅刻することなく学校へと辿り着き、自身のクラスである1年E組(紅井と拓二は同じクラスである)の教室に居た。
現在は、朝のHR前のあのちょっとした自由時間であり、あと1~2分もすれば担任が入ってきてHRが始まるだろう。
遅刻ギリギリだったせいでいつもよりも自由時間がだいぶ短いが、あの状況から間に合ったのだから、自由時間の数分ぐらい安いものだ。
「本当にギリギリだったねー……信号が3つ全部青じゃなかったらヤバかったよ。……にしても暑いなぁ……」
紅井の前の席に座る変態──拓二が、危機を乗り越えたことに安堵した後に、暑さを訴える。
7月の快晴の空の下走ったせいで汗をかいたふたりは、先程から、ワイシャツの襟から胸元の間辺りを摘んでパタパタと風をおくっていた。
「そりゃあ普段歩いて行く時でさえ暑いんだから、全力で走った今日はもっと暑いに決まってるだろ。夏なんだし」
「……そっかー。……あれ、でも、待てよ?
夏と言えば海→海と言えばビキニのお姉さん……はっ! 夏最高!」
「相変わらずお前は……」
「でも夏に行くメイド喫茶も?」
「悪くない、むしろ最高だぜ! メイドさん最高! ……はっ! バカなっ、誘導尋問だと!?」
主人公の性癖が改めて露呈した瞬間である。
最初のコメントを投稿しよう!