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◆ ◆
場所は変わり、現在地は紅井家・玄関。
「ただいまー」
「おじゃましまーっす!」
「おかえりなさいませ、ご主人様♪ お帰り下さいませ、クソ虫」
帰宅を告げる紅井と来訪を告げる拓二に、玄関上がってすぐの所に居たナナが、(いつも通りの)差別的な応対をした。
「留守番悪ぃなナナ…………って、ん? ナナ、もしかしてお前、俺が帰ってくるまでずっと待機してたのか?」
「いえ、ご主人様の“匂い”が近付いてくるのを察知して待機してたんですよ。まぁ、おかげで残念ながらそこの汚物が来ることも判ってしまいましたがね」
「あー、匂いかぁ。そういや『そう』だったな」
すっかりさっぱり忘れていたが、ナナは元々犬なのだ。
彼女の髪の色が犬の時の毛並みの色から引き継がれている事を合わせて考えてみると、犬の時の性質(きゅうかく)がいまも残っており、それで紅井たちを察知できたのだとしてももはや不思議ではない。
「へぇー。ナナちゃんって鼻が利くんだねぇ。あ、ちなみに僕のスメルはいかが?」
「ゲロ以下のにおいがプンプンしますね。とても不愉快なんで今すぐ消え失せて下さい」
想定内すぎるナナの返答に嘆息する紅井だった。
そしてやはり凹む変態だった。
尤も彼も、こんな結果になるだろうと解りきっていた事を訊いた辺り、どうせすぐに立ち直るのだろうが。
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