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「あ、そういえば一矢。今朝から気になってたんだけどさ、今日はなんでワンちゃんが居ないの?」
と、本当に早過ぎる立ち直りを見せた変態がそう問うてきた。
ちなみにナナが犬だった時、拓二がナナの近くに行く度に拓二は吠えられていた。
「あぁ、それか。実はかくかくしかじかでな」
「そんなんで伝わると思ってんの? バカじゃないの?」
「ブッ殺すぞ」
やはり紅井は、ツッコミを生業(なりわい)とするしかないようだ。
「ま、冗談はさておきだ。その“ワンちゃん”なら俺らの目の前に居るぞ?」
「え? いや、たしかに名前はおんなじ『ナナ』ちゃんだけど、僕たちの目の前には可愛い方のナナちゃんしか居ないよ?」
どうやら拓二は、「今日は何故か紅井の所に紅井の愛犬と同じ名前の謎の美少女が居て、でも愛犬が居ない」という、愛犬ナナ≠美少女ナナの認識をしているらしい。
「だから私こそがその『ナナ』なんですよ。今日をもってこの姿になったんです」
まあ原因は分かりませんけどね、と続けてナナは、理解が追い付いていない変態にネタバラしをした。
「へぇー。つまり、僕にめっさ吠えてきたあのナナちゃんがこんな美少女になって今目の前に………………ゑ?」
確認するように口に出す拓二だったが、しかしその突飛な事実を認識した瞬間、言葉を止め疑問を発した。しかも、何故か紅井と同様に古い仮名遣いで。
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