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「……いいですか、三下。要は『あなたにめっさ吠えていた犬=あなたをめっさ罵っている私』という事なんですよ」
相変わらず拓二に毒づくナナ。どうやら、ナナが犬だった頃からこのふたりはこうなる因果にあったようだ。
「…………そうだったんだー……。世の中不思議な事も起きるもんなんだね……」
衝撃の事実を知った拓二は、露骨に驚愕していると言うよりかは──呆然と、どこかしみじみとした様子だった。
「驚いたか?」
「いやー、むしろ納得したって言うのかな? 普通ならありえないはずの出来事なのになんかすんなり呑み込めちゃった、みたいな」
「……だろうな」
現象自体の信憑性はともかく、もしも紅井が拓二の立場だったとしたら紅井もそんなような心情だったはずだ。
とは言っても、ナナの猛毒舌に耐えられる程の変態的なメンタルなんて紅井は持ち合わせていないが。
「あれっ? でも裏を返せば、これも一種の運命ってことじゃ? ナナちゃん、僕と付き合っちゃう?
「すごい不愉快きわまりない発想ですねお断りします」
「照れ隠し? じゃあもう籍入れちゃう?」
「……愚者の自意識過剰って、こんなにも気持ちの悪いものなんですね。吐き気がします」
何だかんだでやっぱりブレない二人だった。
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