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「さぁ、お風呂が沸いたところで。食事の後はお風呂の時間ですよ! ご主人様っ♪」
「なんでそんなテンション高いのお前」
「そりゃあもう、ご主人様と一緒に入浴したいからですよ! シャルウィおフロ?」
「遠慮しとく。つかどうせなら風呂ぐらい英語で言えよ」
拓二が聞いたら狂喜しそうなナナの誘いを紅井が断ったのは、偏(ひとえ)に自身の理性が持ちそうにないからだ。
今朝ナナの裸を目にした紅井だが、あの時は紅井の元来の冷静な人格に加えて、驚愕やら何やらが色々とあったせいで逆に冷静でいられたからである。
だから、いま紅井家の広くはない風呂場でお互いに一糸纏わぬ状態で近付こうものなら、紅井は理性をトばさない自信がなかった。
「ま、とにかくお前が先に入っていいからな」
「それでご主人様が後から一緒に入りに来てくれる、と」
「お前話聞いてた?」
「すいません、『ナナ愛してるえっちしよ』って所までしか聞いてませんでした」
「おいコラいつ俺がそんな事を言ったんだよ」
「いつ、って……一万年と二千年前に言ってたじゃないですか」
「まず俺らが存在してないだろうがバカ者が」
「そして、八千年過ぎた頃から『(ナナが)もっと恋しくなった』って」
「言った覚えねえっつってんだろバカ者が」
「……まぁ、ご主人様と入浴できないのは残念ですが、それじゃあ一番風呂に入らせていただきますねー」
「やっぱり話聞いてたんじゃねえか」
そう言い、嘆息する紅井だった。
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