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嘆息しつつも、風呂場に繋がる脱衣所に向かうナナを見送ろうとしたところで、紅井はふと、ある事に気が付いた。
「ナナ、そういやお前、着替えはどうすんだ?」
「え? 着替えならこのメイド服があるじゃないですか」
「え、なにお前それずっと着てるつもりなの?」
紅井的には、それはそれで眼福だが、疑問を呈さずにはいられなかった。
「それなら大丈夫ですよ、ご主人様。私の『能力』がありますから」
「は???」
ナナがさらりと口にした言葉に、紅井は一瞬、彼女が何を言っているのかがわからなかった。
『能力』──と変態はそう言ったが……、本人も原因を知らない『変身』という馬鹿げた超常現象に続いて、これまた馬鹿げた『超能力』という現象が紅井の前で起こるとでもいうのだろうか?
「……冗談だろ?」
もし本当だとしても、この小説はバトル路線にシフトチェンジするつもりなのかと小一時間ほど問い質したい。
「いえ、それが本当なんですよご主人様。
【家事上手(パーフェクトハンドメイド)】
と、いいましてね。それが私がこの姿とともに手に入れた能力です」
「なにその厨二くさい後付け設定。……で、それは一体どんな能力なんだ?」
取って付けたような能力の設定に呆れ、半ばなげやりに尋ねる紅井。
「こんな能力です」
ナナがそんな紅井に対して不敵な微笑みを見せてそう言うと、突如テーブルが宙に浮いた。
「『家の中に有る物ならどんな物でも自由自在に操作・複製・破壊することができる』……。それが私の【家事上手】という能力です」
「いっ、今更そんな事じゃっ、驚かないからなっ……」
「震え声で言われても……」
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