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絆愛高等学校…
この高校を受験しようする者には、いくつかタイプがある。
スポーツや武道に励み頂点を目指す者、華道や茶道と言った文化面で極めたい者、善くも悪くも活動的で成績に響いた者(ここしか受験できる学校がなかった)、後は他…
ただ一つ言えることは、貧弱者ではやっていけない漢の世界だと言うこと。
根性を叩き直され、優良生徒でない限り逃げる(転校する)ことは許されない。
それほど厳しい学校なのだ。
かく言う俺、月見 星夜(つきみ せいや)は“その他”に該当する生徒だ。
中学時代に陸上をしていて引退した途端、170㌢の体に50㌔の引き締まったスレンダーな体が一気に70㌔へとupし今に至る。
「君さぁ…いい名前だね…」
入学式の後、教室へと向かう俺の肩を誰かが爪を立てて掴んだ。
「月見…星夜っち」
「え?えっと…」
「僕は同じクラスの天利文仁(あまり ふみひと)。渾名は“天文”だ。ヨロシコシコ」
背は俺より僅かに高いが、ヒョロリとした撫で肩の薄っぺらい体に眼鏡を掛け、個性的なイソギンチャクのような髪型。
顔は悪くはないが、何かに取り憑かれているのか、顔色は悪く目の下にクマまでできている。
あまりにも病的に見え、絆愛に似つかわしくないように見える。
「だ…大丈夫か?顔色が悪い…」
「心配には及ばない。昨夜は星を見ることに夢中になってしまったんだ。何億光年も旅してきた光に照らされ、僕のアドレナリンは星の瞬きに呼応するが如く…」
「へ…えぇ…それじゃあ」
意味のわからない呪文を最後まで口走らせず、天文から然り気無く逃げようとする俺を、何本もの手で撫でるかのように上から下左右に至るまでまじまじと見る。
「よしっ、わかった!君の入部を認めよう。光栄に思いたまえ。君は我が透鏡(レンズ)部の記念すべき二人目の部員だ!」
「はひ?」
意味のわからない俺は握手をされ、いつの間にか拇印をポチっとな…
俺の知らない間に、俺の入部は決定されていた。
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