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「天文、 透鏡部の活動に理科室の使用許可がおりたって?」
結局俺は逃げられず、 透鏡部員になった…。
「ああ、新しい星を発見したら校長の名前を付ける条件付きだがな」
俺の問い掛けに顕微鏡を覗きながら『ふむ…』と頷き、頭に上げていた眼鏡を掛け直すとノートにメモをとっている。
「ミドリムシのユーグレナ運動はいつ見ても癒される…」
「ミ…ミドリムシが好きだったのか?」
「僕はレンズが好きなんだな。昔から顕微鏡や望遠鏡に双眼鏡などを用いて見る世界に憧れを抱いていた。それにオペラグラスは、年中無休の僕の必需品さ」
得意気に胸ポケットをポンポン叩く。
「この眼鏡もだて眼鏡だ。僕はどんなものでもレンズを通して目に焼き付けたいんだ。目に映る全てに輝きが増すように思わないかい?」
「俺は眼鏡なんて不便な代物と思ってたからなあ。運動するにしても邪魔に感じる」
「チチチチ…ほっすぃー…不便だ邪魔だとマイナス部分を見る君こそ、眼鏡を色眼鏡で見ているとは思わないか?」
窓を開け天体望遠鏡を設置する。
「ほっすぃーにはまずレンズの醍醐味を味わってもらおう。これを持ちたまえ」
天文はお尻のポケットから虫眼鏡と黒い画用紙を出す。
「いいかい。今から火をおこす」
「は?いや…小学校の頃に実験したけど?」
「ちっ…ほっすぃーのくせに経験済みだったか…せっかくのファイヤーショーだったのに」
残念なのか眼鏡を外し『う~ん…』と悔しそうに眉間を押さえる。
「やっぱり天文は眼鏡がよく似合うのな」
「ふん、当然だ。 透鏡部の部長が似合わんでどうするのだ」
眼鏡を掛け、半分照れながらも得意気に鼻の穴を拡げにやけている天文が、最初のアブナイ男の印象は薄くなった
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