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最初こそ騙された気持ちでいた俺だが、連日教室でも部活でもつるんでいるうちに、天文のことがだんだん可愛らしく見えてきた。
いや、『見えてきた』と言うよりは『可愛らしいことがわかってきた』のかもしれない。
おそらく、密に接していなければ気づかなかったのかもしれないが、天文は自分はクールでできるスマートな男だと思っているように思える。
だが実際は、案外不器用でドン臭いのに、本人は全くそう言う自分に気づいていないのだ。
天然人間とはこう言うヤツを言うだろうな…と初めてわかった。
そのうえ、ドジでも何故か微笑ましく可愛らしく感じる。
そう言えば、中学の時に教室のすみで怪しげな薄い本を闇取引していた同級生達が『萌えとは如何に?』と問答していたことがあった。
『作麼生(そもさん)』『説破(せっぱ)』
『“眼鏡のドジっ娘は萌え”、これは如何に』
『魂への性感バイブレーション』
あの頃は『は?』なんて思いながら固まっていたが、“魂への性感バイブレーション”の意味がわかった気がしなくもない。
そして、クールぶっている天文が時折見せるレンズの向こうの困った悔しそうな顔が、俺の脳を刺激して興味をさらにひく。
「失敗を認めないのな」
「失敗?誰が?僕が?この僕がかい?
おやおや、ほっすぃー異なことを。ちゃんちゃらおかしなアメリカンジョークは言わないでくれたまえ」
眼鏡をクイッと指で上げながらも、自信がないときは、動きが大きくなってイソギンチャクな髪がしなだれるからよくわかるんだ。
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