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グランドに集まった俺たちの前に、掛け声勇ましくバカでかい馬に跨がり校長が参上した。
(((また……)))
今日は“南無阿弥陀佛印前立兜二枚胴具足”で得意気な顔だ。
(誰かツッコミ入れてやれよ…)
そんな命知らずな猛者は、俺を含めているはずがない。
『え~…明日は秋祭りを行う』
「「「はいぃぃい!?」」」
いきなり前ふりもなく話が始まった途端、スピーカーから黒い煙が立ちのぼり、大音量で破裂した。
俺達はどこに驚くべきなのかを戸惑い、ザワザワとし始める。
「明日はめでたい皆既月食だと聞く。スピリチュアルな面から見ると、皆既月食はそれまでの古いエネル ギーが死ぬ日で、新しいエネルギーシステムが始まる日であると聞く。よって先程秋祭りを行うことを閃いた」
スピーカーなしでも十分でかく破壊力のある声で校長はそう言い、『題して…』と一際大きな声で叫ぶと、先生が二人校長の前にスライディング気味に走り込み、巻物を広げた。
【秋之崇飛離柱愛鏤漢祭】
「【あきのすぴりちゅあるおとこまつり】だ!貴様らの中から代表で人柱を一名・介添人も一名とその他数名を選び、彼らを中心に皆既月食に相応しい祭を行う……漢らしく自主的に立候補する者はいないか?」
当然のことながら、嫌な予感しかせず、みんな顔はやや下を向き目を泳がせるだけで先生達を見ない。
「はいっ!」
突然、天文が垂直に手を挙げた。
「よし、天利。立候補だな」
「僕はご存知の通りお祭り向きな性格ではありませんから、彼を人柱に推薦します。僕は介添人で」
いきなり俺の手をとり持ち上げた。
「認めよう。人柱は月見、介添人は天利だ。一同、拍手」
まるで地鳴りのような轟音の拍手を浴び、俺の『嫌だ』の叫びは掻き消された。
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