第1章

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旧家の出身なんて、面倒なだけだ。 特に年中行事やら伝統行事やら、そんな名前がつくものに関わると、ろくなことがない。 今まではその親戚づきあいに引き出されなかった。 当代が改革を試みて、親戚筋を黙らせていたらしい。 僕やいとこ達は、本家の正月行事に参加したことはなかった。 「今回はそうはいかないから」 わかってるよね? と、苦虫を噛み潰したような顔で、当代――いつの間にそうなっていたのか知らないけれど、従弟の峻利が当代の宗主だった――が、僕に告げた。 「人の苦労を何だと思ってるって言いたいとこだけど、相手がのんちゃんだし」 「ああ、うん」 「晒し者になるのは、ゆきちゃんも覚悟して」 「はい」 「奉納舞、正月に舞ってもらうから」 それくらいのリスクは背負ってよね、と、峻利は僕の左手を取ると僕に見せ付けて、念を押してきた。 本家の仕事を手伝うと決まってから、僕の左手には、のんちゃんにはめられたリングがある。
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