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地元の秋祭りで舞われている巡業舞。
あれが、本当は正月に年神さまに奉納されてるとは、知らなかった。
大体、正月の夜中に親戚筋だけの集まりがあるっていうのも、知らなかった。
当代を引き受けておきながら、峻利は本当に僕を含め他のいとこ達を『家』の事に関わらせたくなかったらしい。
参加資格のある男衆だけが、総黒五つ紋の紋付袴で本家に集まる。
僕は初参加。
だから披露目も兼ねて奉納舞を舞えと、そういうわけだ。
秋祭りのからはずいぶん前に手を引いていたから、思い出すのに時間がかかった。
今でも舞人をしている崇史に、かなり見てもらったくらいだ。
組舞の奉納のはずだけど、相手は知らない。
決まった振りだし、その場で合わせるのなんて秋祭りではよくあることだから、気にしてなかった。
「え、直面?」
控えの間で反りの大きな三日月刀を二振り、手渡されて、驚いた。
「ああ。相手に合わせてりゃ打たれることもないだろうけど、うかつに動くな。気をつけろよ」
後見として付いてくれていた父親が、僕の着物を手直しする。
袴は腰で履くもんだ、と、位置を直される。
元々の体格が骨細なのと、いつまでたってもつかない貫禄のせいで、滅多に身に付けない着物は借り物のようだ。
「まさかお前が、奉納舞するとはなぁ…」
「僕も思ってなかったよ」
「まあ、しかりやれ」
楽の音が聞こえてきて背筋を伸ばすと、父親が僕の背を叩いた。
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