第1章

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奉納舞の出だしは、僕――疫神。 笛の音に合わせて中央に進み出る。 振りを思い出してからは、馴染んだように体が動く。 振りかぶった刀を頭上で回す。 ぐるりと上段から振り下ろして一周まわり、決め。 決めのまま止まっていると、大大鼓が鳴る。 じゃらんと呼ばれる鐘が鳴り、龍神の登場。 真後ろから来る気配に、どきりとした。 まさか。 左に振り落とされる、龍神の薙刀をほとんど身を動かさずに紙一重で交わす。 右から回ってくる薙刀は、刀で受け流し。 鐘の音に合わせて、繰り出されるその刃を、形どおりに受ける。 音はどんどん早くなり、最後に龍神の薙刀が降ってくるのを、頭上で両刀を使って受け止める。 跳ね返してくるりと身を躱し、向かい合った。 やっぱり、のんちゃん。 黒一色の紋付袴。 太い握りで、よく見かけるのよりは刃部分の大きな薙刀。 いつも人を食ったようにニヤニヤしているのに、珍しく鋭い表情。 その眼光に、ぞくぞくした。 受けて立とうじゃないか。
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