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ぶん、と薙刀が風を切る。
正月を迎えてキリリとしていた空気が、ピンと張り詰めた。
奉納舞は疫神が追い払われ、竜神が最後の締めを舞って終わる。
払われて先に引っ込んだ僕は、あとの舞を見る余裕がなかった。
なんだよ。
なんだよ。
なんだよ。
なんだよこれ。
なんだっていうんだ。
冬の夜中だっていうのに、ポタポタと汗が落ちる。
気が緩んだ瞬間、手から刀が落ちた。
「すごいな、お前…おつかれさん」
刀を拾い上げた父親が、僕の肩をなでた。
「…え?」
「兄貴の気迫に負けないで舞いきれるやつなんて、そうそういないぞ」
「負けまくってるよ…」
「いやいや、大したもんだ。風呂が用意してある、体が冷えないうちに湯をつかってこい」
「ありがと」
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