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最後、後ろの席。
どういこう。いきなり振り返って話しかけても大丈夫かな?
もしも、後ろの子が誰かと既にお話していたら、私のガラスの心が壊れる自信がある。
しかし、耳を澄ませてみても後ろから話し声は聴こえない。
これは、フリーだ!
完全にフリーだよ。いける、いけるぞ私。
よし、3秒数えたら振り返るぞ。
絶対やるぞ、必ず振り返るぞ。
1……
2……
3!
うぅ……。やっぱり怖い。
くそう。
ええい、ままよ。女は度胸!
バッ、と振り返り、視線を向けた。
そこには、前髪が目にかかりそうな程長く、後髪は襟足できれいに揃えられている少女がいた。所謂、おかっぱという髪型である。
そして、赤渕メガネ。全体的に野暮ったい印象が受けられた。
何を憂いているのか、顔は窓の外に向けられ、その魅力的な唇は不満そうに曲げられていた。
そして、ポツリと誰かの名前が彼女から放たれる。
「ユーリ……」
なるほど、恋する乙女なんですね。
でも、関係ない。ぼっちを回避したい想いは恋にも負けない!
不意に彼女がメガネを取り、眉間を揉む仕草をした。そして、彼女が顔を正面にむけ、目が合った。
「…………」
「…………」
メガネを外すと美少女ですね……
きっと、あれだ。少女漫画の世界からこっちに引っ越してきたんだ。
ぱっちり二重に黒目がちの瞳。高すぎず低すぎない鼻。シミのない健康的な肌。
じっと、衝撃が強すぎて固まっていると、彼女は顔を俯かせ、私から顔を逸らした。
なんだろう。ものすごく心臓の辺りが痛い。刃を突き刺された気分だよ。
でも、そんなんじゃへこたれない!
意を決して話しかける。
「こ、こんにちは―――――」
「よーし、お前ら。担任様の登場だ。静かにしろー」
その日、私は担任を一生恨むことを決意した。
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