第24章 腕枕、抱き枕

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久し振りの自分の部屋 久し振りに見える天井のシミ それと久し振りの 漣の寝息というかイビキが頭上でずっと聞こえている。 俺の頭をずっと乗せていて、腕、痛くないんだろうか。 少しずらして、枕になっている下の腕をそっと開放してあげようと思うたびに、ぎゅっと、逃がさないと思い切り抱き締められてしまうから、このままの状態だけれど もしかして、腕の感覚もうないとかなのか? そう思って、ゆっくり、ゆっくり動いて、指先で二の腕の辺りを突付いたら、クスクスと笑っている。くすぐったいってことは感覚がある、らしい。 よく血が止まらないな。 ――ほら、こっち、そうしてて。 腕枕なんて痛くなるだろうからいいよって、遠慮したら、眠そうな漣にそう言われてしまった。 で、本当に遠慮なく頭を乗せているけれど。 本当に平気? こっちが抱き締めてくれる背中に手を伸ばすと嬉しそうだし。 本当は寝てない? って疑いそうになるけれど、漣の呼吸は明らかに眠っているし。 それに「おやすみ」と挨拶して、キスをした時はもう半分夢の中って顔をしていた。 あまりよく眠れなかったとぼやいていたけれど 俺の顔を綺麗だとよく漣は言う。 でも俺にしてみたら、漣のほうがよっぽど綺麗な顔をしている。 薄い唇から告げられる言葉にドキドキさせられて 抱かれているあいだ中、今は伏せられている黒い瞳にじっと見つめられていると、身体の体温がどうしても上昇してしまう。 スッとした鼻筋も 顎のラインも しかめるとものすごく色っぽい睫毛も、全部、全部、俺が独占したいくらいにカッコよくて綺麗だ。 「俺のだもんね」 そっと呟いてしがみついたら 本当に寝ているの? と覗き込みたくなるくらいにたしかな強さで抱き締められた。 朝の音が外から少し慌ただしく聞こえ始める。 「ふぁ~、よく寝た」 そんな声で目が覚めて、暴れ出したいくらいに幸せだ。 「お前、抱き枕にして寝ると、本当に最高だ」 朝日に照らされる、ものすごくすっきりした寝起きの漣は説明できないくらいにカッコよくて、このまま抱き枕になってしまいたいと本気で願ってしまった。
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