第25章 里帰り、君の場合

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なんてことを考えては、そわそわとして落ち着かない。 「汗拭きシートとか持ってんだな」 「女の子みたいとか思った?」 だって、漣に抱き締められた時に汗臭いんじゃイヤだから。 「いや、なんかモデルっぽい。あ、これ、褒めてるからな」 漣はそういう些細なところまで気遣ってくれる。 モデルの仕事がサイのように好きだったなら、辞めたりなんてしなかっただろうと。だからモデルだった頃の良い思い出がないと。 そんなこともないのだけれど。 というか、そんなことすら思わないから辞めたのだけれど。 「うん、わかってる。ありがと。漣に可愛いとか、綺麗って言われるのはすごく嬉しいよ」 一瞬、目を見開いて、そして耳を赤くしながら「バーカ」と照れて、俺の髪をくしゃくしゃにしてから、見えないように下を向かせるんだ。 グンって頭を手で押して。 その手がとても温かくて、撫でてもらうたびに好きだと実感する。 「俺の裸見てムラムラしてんな」 「なっ! してないよ」 「そうか?」 ニヤリと笑って、長い前髪の奥にある黒い瞳が意地悪な感じに細められた。 「つ、爪痕、痛そうだなって」 「あー……」 「い、痛いだろ?」 俺は一番の下っ端で、漣はそんな俺に付き合ってくれて、だから、今、この更衣室にいるのは俺達だけ。だからこそこんな会話をできている。 内緒の恋愛だから。 「痛くねぇよ」 「でも、これ」 「イく時のお前を思い出せるし?」 「ちょっ!」 強く突き上げられて、意識が飛びかけた瞬間、思わず掴んだ漣の背中、それをまざまざと感覚ごと思い出してしまい、慌てて掻き消すように手をバタつかせた。 「アハハ、すげぇ、可愛い顔」 「は、早く服着なって! 風邪引くから」 そうだ、風邪を引いたら、それこそ大変だ。大事な初舞台はもうすぐそこまできているのに。漣と一緒に立てないなんて絶対にごめんだ。 それに、あの風邪薬は本当に苦いから、飲んだらきっと漣だって目を丸くする。 「何、ふたりでイチャついてんだ」
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