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誰もいないことは知ってたけど、「失礼します。」と声をあげた。
中は、一階よりきれいに整理され茶道の雰囲気そのままで、畳みも綺麗なままだった。
ふわりと後ろに気配を感じて振り返る。
「こんにちは」
私より 年上らしき女の人は、すたすたと上座へいき、茶筅やらお湯やらを準備し始めた。
「どうぞ?」
「えっ?」
「座ったら?」
「あっ はい。」
「いらっしゃいませ。遊客さん。 」
丁寧にお辞儀をされ、お茶をたて、私の前にお茶とお菓子を置いた。
残すのも失礼かとすべて飲みほした。
「あの…先輩は?この茶の室で何を?」
「私は、茶道部の部員で白津 凪。この場所、時々練習に使わせてもらってるの。」
「先生は、そんなこと一言も…」
「顧問と校長と教頭ぐらいよ。後は部員数名ぐらいかな」
「…」
「で?貴方は?」
「私は、桜田美鈴です。 ここには、母の遺言できました。」
「遺言?」
「遊客さんに伝えて欲しいって、私がいけないこと。」
「遊客さんの意味をしってるの貴方?」
「そろばんや習字教室に来てた人が時々甘いもの欲しさにやってくるって…母の友達が…」
「そう。」
少し考えるように私をみた。
「遊客さんがみたいなら、その引き戸の中にいなさい。けして声を出さないようにね」
「今からですか?」
「ええ。今からよ。きっともうすぐ見えるわ。」
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