恋の神様へ

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チャリン、チャリン と軽快な音を立ててお賽銭箱に小銭が吸い込まれていく。 縁結びの神社としてここ大宮辺りでは有名な氷川神社。 あたしの願いは、もちろん恋愛成就!! …ってなわけで、 学校帰りにお参りするのが最近のあたしの日課。 だってね、だってだよ。 あたしの好きな人は、 学校じゃ超有名な人気者。 神頼みくらいしなきゃ無理でしょってくらい競争率が高い。 ただの憧れで済ませばよかったのに あることがきっかけで 気付けばいつも目で姿を追いかけちゃうようになった。 そんなに背が高いわけでもなく、 特別イケメンて程じゃない。 でも、彼の周りにはいつも人がいて。 取り巻きの女子は、ゼッタイ彼を狙ってます!!…って感じで周りにも目を光らせてるし。 ハッキリ言って、睨まれるのが怖くて近づくのもムリ。 ……って思ってたから、 そんな人を本当に好きになっちゃうなんて 自分でも信じられなかった。 「お前もよくやるなー。そんなに好きなの、あの先輩。」 真剣に手を合わせて神前で祈願するあたしの隣で、呆れたように大きな息を吐いたのは小学校からの付き合いである悠也(ゆうや)。 「ほっといてよ。あんたこそ、そんな事言うならわざわざ付き添ってくれなくたっていーのに。」 「アホか。オレだってやだけど、お前んチのおばさんに送りを頼まれてるから仕方なくだなぁ、」 「はいはい、ごはんに釣られてでしょ!…さ、帰ろ。」 ぶつくさ言ってる悠也にクルッと背を向けて、自転車を停めた方向へ歩き出す。 悠也のお母さんは、あたし達が中学に上がった年に事故で亡くなった。 男手一つで育てていかなきゃならない環境になった悠也んチを放っておけなくなったあたしの母は、それ以来、しょっちゅう夕飯に悠也を誘うようになり、今もほぼ毎日顔を合わす。 「今日のメシ何だって言ってた?」 「……ハンバーグ。」 「おっ、やった~!」 小っちゃい子みたいに喜んでる悠也をチラッと振り返って見て、は~、とため息が出た。 「なんだよ、そのタメ息は。」 「べっつにー。同じ男なのに先輩とは大違いだなって思っただけ。」 「お前、あの先輩の何を知ってるっつーんだ? 男の頭ん中なんてたいして変わらねぇぞ!」 大体あれだけ取り巻きがいるんだから、女関係だって乱れてるに決まってんじゃん!、と豪語する悠也を無視して、自転車に跨った。
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