恋の神様へ

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……知ってるもん。 先輩が誰にでも分け隔てなく優しいこと。 それでもその優しさに、あたしは惹かれたんだから。 あのやさしさを、自分だけの”特別”にしたいって、きっとみんな思ってる。 「……悠也にはわかんないよ。」 ボソッと呟いて、自転車を漕ぎ始めた。 陽が沈んで、空が暗くなってくると、 あたし達がよく帰りに近道で通る広大な大宮公園は人通りも少なくなるし 街灯はついてるけど、夕方のこの時間帯は一番周りが見えづらい。 だから、母が心配して悠也に送るよう命令してる…らしい。 公園を通らなきゃいいんだけど、近道なのを知ってるからこその一応の配慮なんだろう。 「おーい、待てって、陽菜(ひな)。」 後ろからキィキィ、自転車を漕ぐ音が追いかけてくる。 片思いの辛さに打ちのめされそうになってる自分に 追い打ちをかけるように “もうやめとけ”って友達にも悠也にも思われてるのが分かるから 勝手に切なくなって、悠也にも八つ当たり気味。 「なに怒ってんだよ。」 ちょっとゆっくり漕いで悠也を待ってたあたしにそう問いかけてくる。 「だってさ、みんな、叶うはずないから諦めろって顔してんだもん。」 「そうか?」 「そうか?って…悠也だってそう思ってんでしょ。」 だから、あたしが日々神社通いしてんの、呆れて見てるんじゃない。 「オレは、諦めろ、とは思ってないけど。」 え、と悠也の方を振り向く。 自転車に跨ったまま、片足を地面につけてるのを見て、あたしも自転車を止めた。 「神社通いなんてしたくなるほど、好きなんだろ?」 「……。」 「だったら、周りがどう思ってようと関係ねーじゃん。」 突然の、悠也のごもっともな意見に胸を貫かれたような感覚がした。 あたしが好きなんだから、周りには関係ない。 「つーか、せっかくオレがここまで付き合ってやってるんだからさ。諦めるとか言うなよ。」 「悠也……。応援してくれてんの?」 意外な言葉に目を丸くしてしまった。 いっつも嫌々付き添ってるの、分かってたから。
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