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悠也と話をした数日後。
いつも静かで、ゆっくりと時間が流れてるような気がする図書室にあたしはいた。
あたしは図書委員なんてのをやってるので、
週に2回、ここに来る。
そして、先輩は意外にも、本が好きなのか調べものがあるのか
時々、フラッと訪れる。
ここで初めて言葉を交わした時の、柔らかい眼差しが忘れられない。
「陽菜ちゃん、コレ、元の棚に戻してきてくれない?」
「あ、はい。分かりました。」
同じ図書委員の先輩からそう頼まれ、本の山を小さい台車に積んで棚へ向かった。
何冊か元の棚へ戻し、隣の棚へ台車をカラカラ動かしながら移動すると。
――――先輩が、いた。……来てたんだ。
地べたに座り込んで、雑誌をペラ…とめくっている。
つい、ジッと見ていると
あたしがたくさんの本を戻しにきたことに気付いたのか、
「……手伝おうか?」
うし、と腰を上げて軽くズボンについた埃をパンパン、と払うと
何も返事をしないあたしの手から、本を数冊奪っていく。
ハッとして、「いえ、そんな。」と断ろうとしたけど、もう遅くて
彼は、え~っと、と言いながら本の背表紙のラベルを見て元の位置を探し始めていた。
すみません、と言いながら、あたしも何冊か本をまた手に取り、戻す場所を探し始める。
「浅野ちゃん、こういうの、読む?」
はい?、と振り返った先の、先輩の手にあるのは
……エロ雑誌。
「みっ、……見ません!!」
大声を出しそうになって、慌ててボリュームを下げて答えた。
こちらに背を向けて、クックック、と笑いを押し殺して大ウケしてるのが
震わせてる肩でよーく分かる。
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