夢の世界

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はっ、はっと荒い息をもらす。逃げなくちゃ、逃げなくちゃ、どこでもいいから逃げなくちゃ!! なんども走って転んだ膝小僧は擦りむいて痛いけれど。なんて膝小僧なんだろう? あきらかに小僧ってイメージじゃない。じゃあ、膝少女? 語感が悪いし、なんだか怖いなんて意味もないことを考えて余計なことを考えてないようにしても、数秒としてもたなかった。背後からくる見えない圧迫感に背中を押されるように私は走っていた。 背後からやってくる。これはわかっている。ここがどこなのかははっきり言ってわからない、おそらくどこかの地下らしき場所、防空壕というか、地下施設だろう。いくらは知っても窓がいっさいないことから推測してみた、だったら、いくら走っても無駄じゃん、苦労なだけ、膝小僧じゃないけど、膝頭で江戸に行くようなものじゃないと言いたくなるが走り出した足を止めることはできない。 ぐっ、グゥゥゥウウウウと怪物のうなり声が聞こえてくる。背筋にビクッと電流が流れたように跳ね上がり冷や汗がどっと吹き出した。来た。そう感じ、十字路にさしかかった。 「…………え?」 踏み出した右足の感覚がさっぱりとなくなった。 「……がっ!? あ、あああああああ!!!!」 切断面からおびただしい血があふれ出し、切り落とされた右足が通路のはしに転がっていて、壁の柱の下のほうに極細のワイヤーらしきものが、通路をまたぐように繋がれていた。通路を走ってきたやつが通り過ぎて、その足を切断するかのように吹き出す血を止めようと両手で傷口を抑えると跳ね上がりそうな激痛に涙があふれ出した。 「痛い、痛い、いたぃ、いたい……」 両手から生暖かい血液があふれ出し、死へのカウントダウンを刻んでいく。これで終わるのならそれでいい。 ザッ、ザッ、ザッと足音が聞こえ、ズッーズッーズッーと石でも引きずるような音が聞こえてくる。痛む傷口をおさえながら薄目を開けてそちらを見る。 男がいた。青白い肌に、巨大な体躯、どこを向いているのかわからない白目の眼孔、片手には持ち上げるのも大変そうな血まみれのハンマー。 「ヒッ!? あああ…………」 切断された傷口を手放して、ガリガリと地面を爪でかいて、少しでも距離を離そうと進む。傷口から血液が流れそれがナメクジのように床に広がっていく。 痛みと恐怖にないまぜになりながら、 「…………ヒッ!?」 みしり
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