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と切断された傷口にさらに激痛が加わった。
「あ、あああああああ、やめて、やめて、痛い、痛い、お願い、やめて、痛いの」
切断された足の傷口にハンマーが深々とめり込んでいた。傷口が潰れ、肉が飛び出して骨が砕かれてしまった。そのまま地面に押し付けるようにされているため逃げることができない。
嗜虐性、残虐性がこの男から伝わってくる。動きを止めたいだけなら少し押さえつけるだけてできたはずなのに、わざわもう、夢なのかをさらに叩きのめしているのはあきらかに私を傷つけることを楽しんでいるからだ。そごでわかっておきながら逃げられない、自分が悔しくて情けない。血だまりに沈んで薄れゆく意識の中で私は見上げた。血まみれのハンマーが私の顔に振り下ろされる。顔の形がぐちゃぐちゃに崩れ、意識もろとも私の命が刈り取られる、その瞬間を、
「…………はっ!?」
自宅のベッド上で目覚めた。いったい何度目だろうか。さっきのような光景を夢に見るのは、もう思い出したくもない。寝不足気味でふらつく身体を強引に動かし掛け布団をめくって身体を確かめる。ワイヤーで切断された片足は元通りになり、傷一つついてない。当然、顔も同じだ。
夢だ。夢だと思っているのに、その現実味のある夢に身体がひとりでに震え出した。この夢を見始めたのは大学生になった頃から、ほぼ毎日、見続けている。それに殺され方もいつも違う、時には身体をチェーンソーで切断され、またある時はぐつぐつに煮えたぎった熱湯に放り投げられ、または、刃物で顔の皮膚を剥がされたこともある。共通しているのは地下施設のような場所で殺すのはいつもあの男、そして私が殺され目が覚める。
もう、夢なのか、現実なのかわからない。どっちも同じのようでもある。寝てもさめても同じことばかり考えている。寝ないように起きようとすると、そうすると夢の光景が脳裏に浮かんで気分が悪い。
「休むわけにはいかないや」
部屋にいてもふさぎ込んでしまうだけ、なら、人の居るところでいたほうがマシだ。人の話し声を聞いているだけでいくぶんかマシになるからだ。
「杏子、あんた、めちゃくちゃ顔色、悪いよ。もしかしてまた。あの夢を見たの?」
私の高校生からの友人、山本辰巳(ヤマモト、タツミ)が話しかけてきた。私、塩塚杏子(シオツカ、アンズ)は苦笑いしながら、
「まーね、でも、ちゃんと寝てる」
「嘘、ご飯だって食べてない」
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