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まるで、年上のお姉さんのような仕草でつんと額に人差し指でつかれる。こういうとき辰巳はすごいと感心する。単に私が間抜けなのかもしれないけれど、彼女は私の些細な変化を気にかけてくれる。実際、食欲もないし、寝不足だ。何か食べなくちゃと思うけれど、喉を通らない。
「やっぱり私も一緒に泊まろうか? 杏子は一人暮らしだし、いくら防犯が整ってマンションだって言っても何が起こるかわからないし、怖い夢をみたらすぐに起こしてあげるから」
「んん、大丈夫だから、ありがとうね。心配してくれて」
「なんてことないよ。頼りたいときはいつでも頼って、料理とかできるし」
もう何度目だろう、こんな会話をしたのは夢のこともそうだけれど、私はあまり自分の部屋に人を入れたくない。別に辰巳が嫌な人でもないし、嫌いでもない。むしろ、友人としてずっと仲良くしていたいでも、部屋には入れたくない。
講義を終えて、コンビニで買ってきたパンを少しずつちぎりながらお茶で流し込み食事を終えて図書室に向かう。
夢は何かの暗示なのだそうだ。とある本の一文を読みながら私は思う。あの夢はいったい何を暗示しているんだろう? 単純に考えるなら私があの男に惨殺されるけれど、私はあんな場所なんて知らないし、行くわけもない。拉致、監禁という言葉が浮かぶけれど、ドラマでもないのにそんなことあるわけがない。
じゃあなんだ? あれはいったいどんな夢なんだ。わからない。
ペラペラとページをめくり、そして私はあるページで指が止まる。既視感と書かれたページに目がとまる。または、デジャヴ。
すでに見た現象、もしくはなんだかこんな光景を見たことあるなぁと感じることを既視感、デジャヴと言うらしい。
見たこと、聞いたことの追体験、はっきりしたことは言えないがこれは誰もが持つ無意識のうちにある力の一つ。
そう言えば昔、読んだ漫画にポストの中の明日という漫画を読んだことがある。小説でも何千回、何万回と夏休みを繰り返す物語もあった。
繰り返す毎日からほんの少しだけ見える明日の出来事ーーーー確信はない、こじつけでしかないけれど、こ宇しておかなければ何かしらの理由を見つけなければ頭がおかしくなりそうだったから。
その時だった。ポンッと肩をたたかれた。
「大丈夫か? すっげー思いつめた顔してたけれど」
イケメンがそこにいた。爽やかな青年が私の肩に手を置いている。
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