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親切なのかもしれない、もしもこんな状況でなければもっと違う気持ちににっていたかもしれないけれど、私はそ迷惑ちになれず、気安く肩に置かれた手を振り払い、きっと睨みつけた。優しさが憎い、私がどんな境遇にいるのかも知らずにへらへらと笑っていそうなこの男に対して嫌悪感がつのっていく。何様だと睨みつけるけれど、男はまったく動じた様子もなく、
「そんな怖い顔しないで、ほら、ここは図書室だし、騒いだりしたらほかの人に迷惑にならない?」
正論だった。現に私が肩に置かれた手を振り払った性でかなりの注目をあつめている。好奇というより、騒がしくて迷惑だから痴話喧嘩はよそでやってくれという感じで私は本をもとの棚に戻し、さっさと図書室を出た。恥をかいた、あんなに注目されるなんて何をやってるんだ、私はと自己嫌悪に陥る。もう、何も上手くいかない、それもこれもあのイケメンのせいだと自己嫌悪から、責任転嫁に変わる。むしゃむしゃした気持ちがおさまらない。
「イケメンなんてみんな絶滅すればいい」
「なにげに怖いこと、言ってるね。なに、イケメンに恨みでもあるの?」
とふとわき出た独り言に答える声があった。図書室で話しかけてきたあのイケメンだ。カァァアとほっぺだが熱くなる。
「恨みなんてないしっ!! というか、なんでついてきてるの、どっか行け!!」
「どっか行けって、そんなカリカリしてるけれどちょっと落ち着きなよ」
あんまり怒るとよくないよと彼は笑った。イケメンってやつはなんでこうも笑顔が似合うんだ。イケメンだからか、
「落ち着いてるし、怒ってないし、私はあんたみたいないけ好かないイケメン野郎に用はない」
「君に用がなくても、僕にはあるんだ」
彼は言った。
「君は夢の世界に囚われている。じきに君は殺されるだろう。だから……」
彼が何かを言う前に、私は思いっきり彼の横顔をひっぱたいていた。バカバカしい、夢の世界に囚われている? 殺される? 適当に付け加えただけの戯れ言なんて聞きたくない。不幸そうな女に声をかけていい気分になろうだなんてそうはいくものか、偶然であっていてもそんなのはたまたまだ。
「私に近寄らないで、どっか行って、不幸そうだから? 体調が悪そうだから? そうやって優しくすればなんでも思い通りになるなんて思わないで!!」
どうだっていい、どうだっていい、単なる八つ当たりでも私は、誰も頼らない。
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