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高遠さんが予約の名前を告げると、店員さんは半個室になっている席に案内してくれた。
私たちは向かい合わせに座る。
何とか人心地ついたような、逆に逃げられないよう捕獲されたような複雑な気持ちになったけれど、高遠さんは飄々としていて、全然プレッシャーも感じていないようだった。
「変に緊張してるともたないんじゃない?」
「そう言われましても…」
「今ちょっと喋って打ち解けたって事にすれば?そもそも俺等、一度しか喋った事ないでしょ」
確かに。
それはその通り。
高遠さんと私は、一度あのファストフード店で喋っただけ。
その話を今ここでされたと思えば…って、逆にあの話を今されてたら平静でいられなくない?
あぁ、もう何考えてんだろう私。
やっぱ無理かも…。
「来たよ」
体格とピアスと、染めた短髪。
そのせいでいかつく見える高遠さんは、Tシャツの上に着たジャケットのせいで制服の時より更に大人っぽい。
見た目の割に口調や語尾が優しいせいで、余計に大人びて見えた。
落ち着き払った彼の声に顔を上げると、そこには連れ立って店員さんに案内されてくる父と、父の元カレがいた。
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