第1章

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私の青春は、家事と父の世話で過ぎて行く…というわけでは無い。 父もそこそこに家事は出来るし、分担したり煮物は大目に作って冷凍したりと抜けるところは手を抜いてこなしてる。 残念ながら彼氏は居たりしないけれど、一般的青春ポイントであるところの部活はやってる。 弱小だけど、テニス部。 男子テニスはそこそこ強いけど、女子は弱くて人数もそんなにいない。 その分仲良くやってるんだけど、ちょっと仲間意識が強すぎる気がしなくもないかな。 それでも皆良くしてくれるし、そんなに遅くまで練習が無いのも助かる。 部活の後遊びに行くにしても、先輩の中に門限のある人がいて、遅くなる前に帰れるから私も気兼ねなく参加できるのがありがたかった。 「ネコ、今日も部活?」 「うん、でも今日は部長居ないから練習しないかもだけど」 「そっか、お疲れー」 「うん、バイバイ」 私は大抵の友達に『ネコ』って呼ばれてる。 別に猫っぽいわけじゃないハズだけど。 苗字が「根古谷(ねごや)」だから、最初は”ねっこ”って呼ばれて、最終的に”ネコ”になった。 友達と別れて部活棟へ向かおうとしていた時だった。 「おい」 私の背中に投げかけられた声。 でも、聞き覚えのある声でもなくて、名前を呼ばれもしなかったから、自分じゃないと思いそのまま足を進めようとしていた私。 「根古谷、だろ?」 私の苗字は珍しい。 少なくとも学年に一人しかいない。 もっと言えば、親戚以外に同じ苗字の人と出会った事も無かった。 確信を持って振り返った私は、見知らぬ声の主に、知っているところがあるか確かめる為じっと視線を這わせた。 けれど、そのシルエットですら知ったところが見つからない。 「そうです、けど」 上履きの色が、青だった。 唯一、彼が二年生…私の一年先輩だという事だけはわかった。
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