第1章

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「どなたですか?」 「高遠って言えば、わかる?」 「…ごめんなさい、わからないです」 「…あんたの親父さんの事で話、あるんだけど」 父の事で話…。 やっぱり思い当たらない。 父って単語では正直先日の先輩と再会したって話しか全然思いつかない。 目の前の先輩が父と知り合いだとも思えないし。 それに、話があると言われても、男の人だから正直少し警戒してしまう。 「時間取らせないから、ちょっと来て」 「今から部活なんですけど…」 「いや、ちょっとだけだから」 「そんな事言われても困るんですけどっ」 「じゃあ、部活の後でいいから」 ものすごく真剣に言われてしまうと、こちらとしても断りにくい。 結局、言われるままに部活の後駅前のファストフード店で待ち合わせる事になった。 部活のメンバーにはちょっと先輩に呼び出されているからと言って、放課後のお茶は断り帰路に着いた。 駅前のファストフード店の中、奥の方に座る男性がいた。 長身に、短髪の色は少し茶色くて、ピアスが付いてる。 半袖のシャツから覗く二の腕はしっかりと筋肉がついていて、何かスポーツをやっているんじゃないかと思った。 顔立ちは濃くて鼻が高いからイケメンといえると思うけど、全体的にちょっといかつい印象というか…憮然とした表情が怖い。 動作も気だるげで、何だか下りの中に寝そべる猛獣みたいに見えた。
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