第1章

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彼は私の姿をみとめると、軽く手を挙げた。 空気を読んで椅子に座ると、今度は彼が立ち上がった。 「ちょっと待ってて」 そのまま少し待っていると、彼はトレイを持って戻って来た。 その上には飲み物が二つと、ポテトとカップに入ったケーキ。 「甘いもん大丈夫?」 「……はい」 好きです。 ふつーに。 「えっと…」 「食えば?」 「い、いただきます…」 このいかつい感じでスイーツとキャラメルミルクティを買って来たのかと思うと、ちょっと和む。 って、和んでる場合じゃない。 この人、父の話って…何だろ。 「あんたのせいで、困ってんだよね」 「……へ?」 私、何か人様を困らせるような事、したっけ? 自分の周りが平和過ぎて全然思い当たらない。 「もしかしてさ、今はやりの腐女子とかなわけ?」 「へ?私ですか?」 父でリアルゲイを知ってしまってる私がそんな男同士でどうのこうのって話に夢を持てると思う? なんて言わないけど。 いきなり何の事? 「否定するつもりは無いですけど、そういう趣味は無い、デス」 「じゃあ、何であんな事言ったの?」 「はい?」 「父親に、高校時代の元カレとヨリ戻せばって言ったろ?」 「……あ、言った」 「ふざけんな。何勝手な事言ってくれてんだよ…うちの親父が…」 「え、あの…すみません」 「何?」 目の前の先輩…高遠さんと言ったか。 途中で言葉を遮られ不機嫌そうに眉を寄せた彼だけど。 えっと、待って。 つまり、この人は…。 「お父さんの元カレさんの、息子…サン?」 「今頃かよ!」 噛みつくようなツッコミに、ビクつく私だけど、一言言わせて欲しい。 先に言えよ!
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