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「母が、受け入れてたから…」
いやに自分の声が、自分の耳に響いたと思った。
だけど、それは高遠さんにとっても同じだったみたいで、一瞬目を瞠ってから、今度はさっきより睨まれた。
「亡くなった母の日記に、全部書いてありました。それを読んだ私が、父と高遠さんのお父さんの事を拒絶する事は出来ません…母が生きていたら…母さんが認めても自分は嫌だと言えたかもしれません…でも…」
今となってはあの日記は遺言めいた重みを持って私の心にどっしりと根付いている。
相手の全てを受け入れる、なんて本当に出来るのか私にはわからない。
私は少なくとも父の全てを受け入れるのは難しい。
拒絶しないようにするには、父と父の過去に距離を置く。
それが私の精一杯だから。
母はどうだったんだろうか。
日記に書くことで、自分は納得してるんだって自分で思い込もうとしてたのかも知れないし、本当に全部受け入れてたのかもしれない。
それは私にはわからないし、父にだってわかんないところ。
だから…。
「高遠さんは私が父達の交際を賛成するなら私を敵として責めるとか、説得するとかしようと思ってるんでしょう?でも、私は敵じゃない…けど、味方でも無い」
「中立ってわけ?」
「はい。もう高校生だし、オープンすぎるお付き合いをされたら困るけど、表面的に節度を守ってくれるなら、ノータッチでいきたいんです」
「本当にそれでいいの?」
「良いとか悪いとか、言えないです」
私には、言えない。
父が本当はどう思ってるのかもわからないけど。
本当は女の人を愛せない人で、母の事を愛していなかったかもしれないって考えた事がある。
でも、それを確かめた事は無い。
愛していたと言われた方が罪悪感は大きく私にのしかかり、
愛してないと言われた方が、自分の存在意義を見失う。
どちらにしても、私にとって良い事は無いから。
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