第1話

第1章

「意味わかんないな」

「え？」

「父親が男と付き合いたいなんて、再婚したいって言われるよりショックじゃないのか？」

「どうでしょう…どっちでも、父がそうしたいならそうすればいいと思います」

「親父の言いなりってわけ？それともお父さんキラーいってやつ？」

「父は好き…ですけど、言いなりでも無いと思います。ただ、父の好きにしたらいいと思ってるだけ」

意地悪な言い方をされても、意見は変えられない。

別に理解あるふりをしてるわけでも、ましてや興味が無いわけでもないんだから。

「…じゃあ、こういうのはどうかな」

「…？」

「やっぱり紹介して欲しいって言って、俺と根古谷が仲良くなる」

「…それに、どんな意味が？」

「子供同士が付き合って、家族になるかもしれないなら、親同士にはただれた関係なんて持ってもらったら困る」

「まあ、確かに。ていうか、父とかつてそういう関係だった人の息子さんと仲良くするのには抵抗あるんですってば」

「別に本当に仲良くするわけじゃない。紹介してもらって、気が合ったフリくらい協力してくれてもいいだろ？」

高遠さんは余程父親が男と付き合うのは嫌らしい。

気持ちはわかるけど。

でも、ちょっと待って。

私は父が誰かと付き合いたいなら、男でも女でも、浮気性だとかＤＶだとか、借金あるとかじゃない限り何も言うつもりない。

ていうか、言えない。

だけど、高遠さんにちょっと口先だけで協力するのは、別にいいんじゃないだろうか。

高遠さんには父が誰と付き合ってもいいなんて言ってるけど、やっぱり…どこか同性と付き合っていて、今その関係が復活するかもと言われたら正直抵抗はある。

なら、彼の尻馬に乗ってしまえばいいんじゃないか。

本当に仲良くなるわけじゃない。

作戦の内だもん。

「それって、具体的にどうすれば…？」

高遠さんの目が、キラリと光った。