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「そんなはずない…。」
それは、僕の唇から、こぼれ落ちた本音…。
目の前に、ぶら下がっている緑の物体…マメの鞘は、僕が思い描いていたものと全然違っていた。
風邪をこじらせて、10日ばかり寝込んでしまった僕は、今日から、大学にも、バイトにも復帰だった。
寝込んでいる間も、フタバちゃんのことが、ずっと気になっていた。
恐竜の卵が、すごく気になっていた。
今、まさに、フタバちゃんの元へと、僕は向かっていた。
そして、期待外れのその物体は、僕の目の前にあった。
「…なんでだよ。」
鞘は、僕が、想像していた大きさの何分の一なんだろうか…。
せいぜい長さは、20センチ。これじゃあ、中のマメは、大きめの空豆より、小さいかもしれない。
「…詐欺だ。名前詐欺。
…どこが“恐竜の卵”だよ。
…最初に見たやつより、ずっと、ずっと、小さいじゃないか。
…恐竜なんて、生まれないよ…フタバちゃん。」
北風が、冬の気配を運んできていた。
フタバちゃんは、責める僕に、ごめんなさいって謝るみたいに、枯れてしまった葉っぱを揺らしていた。
残っている藤色の蝶々も、羽ばたいていくことなく、カサカサと、音を鳴らしているだけだった。
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