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フタバちゃんは、見る度に、大きくなっていった。
背は、そんなに高くならなかったけど、伸ばした蔓が、どんどん長くなっていった。
花壇の隣の木に、いつの間にか、蔓が、絡み付いて、上へ上へと、伸びていく。
「お前、どこまで、伸びていくんだ?」
フタバちゃんが、選んだ枝が、たまたま、短かったみたいで、端まで行くと、たらんと蔓は、垂れてきた。
その頃になって、俺は、ハタと、気が付いた。
フタバちゃんは、実どころか、花も咲いてない。
「なあ、このまま、ただ、蔓を伸ばすだけなのか?
花も実も、出来ないのか?」
フタバちゃんは、俺の疑問など、そ知らぬ顔で、いつの間にか、また、蔓を伸ばしていた。
何日かして、フタバちゃんを覗きにいったら、垂れた自分の蔓を伝って、また、上へと伸びていた。
「自然の神秘だな。フタバちゃんの野生は、衰えてないんだな。」
伸びた蔓の先が、木の枝だの中に隠れてしまって、わからなくなった頃、薬剤師のお姉さんだけでなく、僕も、フタバちゃんへの興味が、なくなってきていた。
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