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死ぬか生きるか。死ぬか生きるか。死ぬか生きるか。
死ぬか。死ぬか。死ぬか。生きるか。
朝から重苦しい時代劇をテレビが映し出している。
若い主人公が敵の将軍の実の弟だと分かり、絶望的で視聴者の同情を引くにはもってこいのそんな場面。
将軍である兄は“血縁とて容赦はせん”とのこと…。
テレビを消し、重い腰を上げる。
こんな陰鬱な気分なのはきっと、あの時代劇とこの春の陽気と、自身が抱えている奇病が起因となっている。
そうつっぱねて自分以外のもののせいにしていたのも、数年前まで。
「そんな制服着て何処行くの?」
玄関に向かう俺の背後から飛んでくるその声に、耳を傾けようとは思わなかった。
靴ひもの解けたスニーカーに足を突っ込み、ドアノブに手をかける。
「自宅療養でしょ?」
律都が歯ブラシを片手に玄関までやってくる。
同じ高校の制服に身を包んでいるというのに、自分よりも遙かに様になっている。自嘲していた。
「気分だけ。学校には行かないから散歩くらい許せよ。学校行ってらっしゃい」
この街の高校生活最後の始業式は午後からだそうで。
そんなものに無縁の俺は、弟に背を向けて歩き出す他なかった。
それは、振り切るとも言う。自分自身が答えを脳内にアナウンスしたため、再び自嘲し、到着したエレベーターに乗った。
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