0.夕暮れのスピカ

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まだまだ肌寒いこの季節。 桜の花びらが飛び交っていたり、道路に散らばっていたり。 川に流される花びらを眺めて“脱落者”という言葉が浮かんだ。 いずれこの中の一片になってしまうのだと思うと、笑わずにはいられない。 前を行く学生たちは同じ桜並木を楽しそうに歩いている。 誰もかれもが、明日死ぬかもしれないのに。 そんなことなんて微塵にも考えていない、幸せそうな笑顔だ。 通学路からはずれ、図書館に行ったり、カフェ(しかし刺激物は止められているので、緑茶を頼んだ)で適当に過ごすと、もう午後三時半を回っていた。相変わらず時間を持て余していると思う。 学校はもう終わったのだろう、どこかの高校の生徒が数名、カフェに入ってきて騒いでいた。 あまり手をつけてない緑茶をそのままにそこを出ると、もう一度図書館に寄り、本を数冊借りた。 その足で前々から訪れてみたかった所へと向かう。 七階建ての幽霊マンションと言えば、ここら辺ではひとつしかない。 地元民ならば、まず近付きはしないだろう。 しかし、辿り着いてみて、オカルトと呼べるに足らないと分かった。 せいぜい古ぼけたマンションと言ったところだ。
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