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彼女はまた、距離をおき、沈みかけの夕日を見た。
ちらりと俺を見て、再び、夕日を見やる。よくわからない。
すると、彼女は笑みを解いた。幼子を見るような、優しい目をしている。
「あなたの瞳はあの色を映すのね。…綺麗ね」
風に運ばれた言葉は、右耳から入り、全身を電撃が撃つように巡り、左耳から出て行った。
少し鳥肌が立っていた。
何も言えず、彼女から顔を背けて咳き込む。軽度だが、断続的な咳で息苦しい。
ああ…、変な人に会ったな。
夕日に照らされた彼女の横顔が眩しくて、目を凝らすもよく見えない。けれども。
あの春の一等星はたぶん、君だったんだ。
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