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「ロックって言うのはね、つまり歴史の一部分でしかないんだ。それは生き様でもなければ、宗教でもない、どうしようなくその時代の人間によって捻じ曲げられた概念みたいなものでしかないのさ」 ユウは物憂げにストラトキャスターの弦を何本かつま弾くと静かにそう言った。アンプに繋がっていないそれは、生身の弦の振動を伝える。 放課後の教室は電気も消されて、窓に見える夕暮れ空で全体がオレンジ色に染めあげる。 「受売り」 彼女の大粒の瞳が僕をまっすぐ見つめる。 「え?」 「あたしの師匠の口癖」 へぇ、師匠がいたのか。 僕はそのときそんなふうに漠然としか考えていなかった。むしろ、彼女の弾くフレーズの方に耳が傾いていたのかもしれない。 「あたしにはこれしかないし、でも音楽に救われたなんて思ってない。師匠には感謝してるけど」 ーーーお金の稼ぎ方は教えてくれなかったけど、と冗談を言うように鼻で笑った。 どうしてそんなことを僕に話したのかはその時の僕には分からなかったけど、でも今思うとユウがギターを手放してしまったのは...... Afraid of what you need......?
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