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階段を下るにつれて奥から明かりが漏れているのに気づく。僕がキャリーバッグを一番下まで降ろすと、その音に反応したのか防音扉前の受付らしき机の奥、そこから人影が出てきた。 「ああー、ごめんね。まだオープンじゃないんだけれど」 その人影ーーー若い男が優しい声で言った。20代前半だろうか。メガネをかけ、女性のような柔和な笑顔。ダボダボのトレーナーに、ダメージジーンズ。お腹のフロントポケットに手を入れたまま僕に近づいてくる。バイトの人だろうか? 「いえ、僕はその......」 と言いかけたところ、ガチャリと奥の防音扉の重いドアノブが持ち上がった。 出てきたのは身長180センチはあるだろう金髪の怖いほど鋭いキレ目のこれまた若い男。首まで伸びた髪を後ろで短く括り、黒地のTシャツを肩でまくって、露わになった腕の強靭な筋肉が威圧感を引き立たせる。金髪の男が出てくると同時に中の音が少し漏れた。中はリハーサル中なのか。 僕は咄嗟のことで自分の荷物でこけそうになる。 「おいサツキ、そろそろ出番だ。指動かしとけ」 金髪はメガネの男ーーーサツキさんにそう言うと、今度はその視線が僕を捉える。 「誰だこいつ」 不機嫌なのか、素でこうなのか分からない低い声を唸らせる。僕は思わず後ずさりしてしまった。 「お客さん睨んじゃダメでしょ」 サツキさんが呆れ交じりに諭すが金髪の射抜くような目つきは変わらない。
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