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やがて特設ステージらしき所にスポットライトが当たってSAME王子が現れた。
「みなさま、本日はお日柄もよく、お茶会にはもってこいのすっとこどっこいでございます」
慣れないことをやっているせいで言葉遣いがおかしくなっている。
しかしみんなは静かに耳を傾けていた。
「本日皆様をお呼びしたのは他でもありません、大和君丸様とキング氏こと yuu 貴妃への餞(はなむけ)の言葉を贈る会をするためでございます。
君丸殿、もうピアノはいいですからこちらへ」
王子が呼ぶと、会場の真ん中でドレスに身を包みピアノを弾いていた色白の女性が顔を上げた。
ピアノ演奏中は誰も気づいていなかったが、彼女こそが君丸姫だったのだ。
八重歯は口を閉じていれば見えないし、目は鍵盤を見ていて伏し目がちだった。
ツノも綺麗に装飾され、髪飾りに見えなくもなかったからだ。
君丸姫がステージに上がると会場から歓声が上がった。
「君丸殿、今日はあなたが主役の日なのですから、あなたから皆に尽くさなくても良いのですよ」
「そこにピアノがあったから弾いたんじゃよ」
そこに山があったから的な感じで返す君丸姫。
王子が「ではあのピアノはお土産に差し上げましょう」と言うと、「置く場所がないからいらんわい」と彼女は笑って断った。
そんなやり取りをしているうちに王子があることに気づく。
「そういえば、yuu 貴妃の姿が見当たらないが……」
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