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どれくらい経っただろう。
深呼吸をしたくなるような、そんな時間だった。
隣にいる彼を眺めてみる。
どこかで会ったことがある気がする。
これは、女子特有の運命を感じている時なのだろうか。
『そろそろ、戻ります。この時間はまだ寒いですよ。気をつけて。』
いつもなら、歯が浮いてしまいそうな台詞なのに、素直に嬉しいと思った。
彼は私にそっと上着をかけてくれた。
呆気にとられていた。
こんなドラマに出てくるような男の人がいるんだぁと感心すらしていた。
しばらくして、身の上話をしてないことに気づいた。
微かに煙草の香りがするこの上着を返す術がなかった。
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